「拡張するテレビ」 日本でVODが浸透しなかった理由 ひかりTV「お値打ちプラン」をやめた理由

2016年8月29日月曜日

デジタル機器とサービス

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拡張するテレビ 境治著

アドバタイムズの告知で目にした「拡張するテレビ」を読んでみました。



著者によると2015年はSVODが脚光を浴びた年であったとのこと。
SVODとは「Subscription Video on Demand」=定額制動画配信の略語であります。

ひかりTVのSVODの利用をやめた理由

SVODの昨年の具体的なトピックとしては、ネットフリックスの上陸に加え、dtv、HULUなどのサービスが立ち上がったことがあります。
著者は、VODが日本でなかなか浸透しなかったひとつの理由として、サービスの告知や啓蒙の不足をあげています。
海外で猛スピードで成長するネットフリックスの勢いが日本に持ち込まれ、オリジナルコンテンツの制作とサービス告知が広がれば、SVODの市場を掘り起こす可能性もあるとのご意見。

自分はこのSVOD利用歴が長く、元々はぷららの4th MEDIAに加入、その後改称されたひかりTVをそのまま8年ほど継続利用して今に至ります。
サービススタート当初からずっとSVODと多チャンネルを組み合わせた「お値打ちプラン」で契約していましたが、昨年とうとうSVODは外して多チャンネルだけの「テレビおすすめプラン」に変更してしまいました。

SVODをやめてしまった理由は2つあります。
まずは定額制で元を取れるほど、たくさんの動画を見る時間がないということ。
加えて、これはひかりTVに限った話ではないのですが、本当に見たいと思う話題作は年に数本しかなく、しかもそれらはSVODプランの見放題の対象外のため結局追加料金が必要となるということであります。

ちなみに、ここ一年で追加料金を払って利用したVODタイトルは「オデッセイ」「アントマン」「アナ雪」「ベイマックス」「インサイドヘッド」「トゥモローランド(これは失敗でした)」「バクマン」など。
折角金を払ってみるのであれば家中で見れるものを、ということでディズニーが多くなってますw。

日本でこれまでVODが浸透しなかった理由

ここでVODを長らく利用してきた自分の意見を披露すると、日本でこれまでVODが普及しなかった理由は大きく以下の3点と考えます。

テレビのネット接続率の低さ

まず1点目は設備面の問題で、テレビのネット接続率の低さが挙げられます。
接続実態とはちょっと違いますが、総務省「平成26年通信利用動向調査」における「デジタルテレビのインターネット接続機能の利用状況」によると、利用率はデジタルテレビ保有者のわずか14.2%。


ネットフリックスよりも随分早くリモコンにボタンを設置したコンテンツサービス「アクトビラ」の利用が全然伸びないのもうなずけます。
最近の家庭内LANは無線が主流のため、テレビ本体機能としてもWi-Fiで接続できるようになりましたが、これまでは有線LANで物理的にテレビまで遠くて繋げないとか、リテラシーの問題で宅内ネットワーク自体が設定できないとか、そもそもテレビをネットに繋ぐなど思いもよらないとか、そんなことが理由だったものと思われます。
ちなみにウチのひかりTVのSTBは、一時期PLCアダプター↓(コンセントを経由してつなぐ電力線通信)で繋いでましたが、今はルーターから長さ10mのLANケーブルで繋いでおります。

コンテンツ供給側のウインドウ戦略

2点目はコンテンツ供給側のウインドウ戦略の問題であります。
通常コンテンツビジネスでは、一つの作品でできるだけ多くのチャネルから利益を確保しようとするため、映画→DVD(レンタル含む)→VOD→テレビ放送のように、販売・放送時期をちょっとずつスライドさせてリリースするのが一般的で、VODはDVD販売の後に遅れてリリースされていました。
しばらく前まで動画のネット配信については、コンテンツ供給側が課金利益と配信負担についてシミュレーションを行うと、必ずリクープできない(採算があわない)という結論になり話が進みませんでした。
誰もリスクを負わない状況では保守的なチャネル選択となり、割と最近までVODよりもDVD販売を重視する傾向は続き、結果DVDのレンタル開始後しばらくたってから出がらしのように配信されていたことがVODサービスへの加入メリットを低くしていました。
ネットフリックスは、アメリカで稼いだお金を「火花」のようなオリジナル作品につぎ込んで話題喚起→会員獲得という目論見だと思いますが、普通に考えたらこれも「火花」だけではリクープしないので、安価に大量の面白いコンテンツが制作・供給できるテレビ局との連携はマル必だと思われます。

見たいと思う話題作が少ない

3点目はコンテンツの問題で、映画マニアではないフツーの人が本当に見たいと思う話題作はそもそも年に数本しか存在しないのでは、と思われることです。
一般的に世の中の人が見たいと思う「話題作」というのは、「ロードショー公開時に多額の広告費を使ってTVCMをガンガン流すことで映画会社が自ら話題をつくり上げた作品」であることを意味しており、そこで覚えていなければ、普通の人はどれだけ新作のタイトルがあっても見ようという気にもならない、という話です。
んなこといったら、金がかかってる作品しか見てもらえないじゃん、ということになってしまいますが、こんだけ情報が溢れている中で目に触れ興味を引いてもらうには金がかかるのは必然といえるでしょう。
ひかりTVのような会員サービスは単品購入以外にも月額費用がかかるわけで、見たいと思う話題作がタイトルに少ない場合、レンタルビデオでいっか、ということになっていたものと思われます。

SVODが離陸する環境は一気に整いつつある

以上が、これまでのVOD普及の阻害要因であったと考えますが、いずれの問題も各家庭のネット環境の進化や、音楽配信や電子書籍など他分野の成長とあわせて状況は追い風となっています。
1点目の接続環境については、テレビのWi-Fi接続化やタブレット・スマホ等テレビ以外でのマルチデバイス配信の普及により好転しているものと思われます。
2点目のコンテンツ供給側の意識についても、もはや今更ネット配信抜きには考えられず、少なくともDVD販売(レンタルビデオ)チャネルの後塵を拝することはなくなりました。
3点目のコンテンツ問題は、サービス側の工夫次第で、話題作とまではいわずともSVODでも元がとれるだけの見るべきコンテンツが揃っていると利用者に思わせることで解決可能と考えます。具体的には、コンテンツ制作会社との連携によりオリジナルコンテンツを安く大量に調達したり、著者の言うとおりレコメンド機能を充実させてロングテールでの利用を促すことなどが考えられます。
レコメンド機能には、amazonのような「これを見た人はこんな作品も見ています」的な薦め方や、ガイドブックのようなオフラインツールもあったりしますね。

てことで、カタ目の内容が無駄に長くなりましたが、VODが市民権を得るまでは時間を要したが、SVODが離陸する環境は一気に整いつつある今日このごろ、というお話でした。
ご精読ありがとうございました。


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